建設業界の未成工事支出金の取り扱いについて

はじめに

建設業の会計は、一般的な商業簿記とは異なり、建築に関わる原価計算と未計上売上(未成工事)に関する出金や入金を取り扱う、未成工事支出金や未成工事受入金があります。

この未成工事勘定の取り扱いをきちんと理解しないと経営的に困ったことになりかねません。今回は、その注意点を中心にお話ししていきたいと思います。

なぜ未成工事勘定なのか?

そもそもこの勘定が生まれた原因は、建設業の工期にあります。

当たり前のことですが、建築物を構築するには日数がかかります。数ヶ月や数年、十数年というものもあります。

会計上、売上と認定するために、完成工事高という勘定を使います。つまり、完成時点で売上に認定するということです。

ですから、売上に認定される以前に支出したお金や受け入れたお金は、勘定科目上の相手科目が必要になってきます。そこで生まれたのが、未成工事勘定です。

未成工事勘定の特徴

未成工事勘定は、一つ一つの現場の収支進捗から生まれてきます。

つまり、一つの現場の予算から実行をしていく進捗を、それぞれ全体の現場を総和したものが、この未成工事勘定となります。

ですから、一つ一つの現場の予算実施管理が基礎的な数字を構成していきます。一つ一つの現場の数字を適切に適時管理していかなければ、この勘定の正確性が担保されないのです。ところが、以前にも指摘しましたが、建設業では、工期厳守が徹底されており、予算管理よりも工事の進捗の方が重要視される傾向があります。

工事の進捗に傾注することにより、本来きちんと管理すべき予算が後回しになり、結局、未成工事勘定自体が不確かなものになりやすいのです。

会計では

会計というものは、会社の適切に運営するために行っているのですが、他方、税務申告のために行っているものでもあります。

多くの会社では、会計は税務会計のことで、いわゆる税務申告のための会計に終始しています。そして、税務申告では、過少申告は厳しく問われますが、過大報告については、税務上はそれほど大きな問題を持ちません。

建設業界では

建設業では、建設業許可というものがあり、様々な要件を必要とします。

そして、建設業社は、毎年決算後に経営事項審査を申告する必要があります。いわゆる経審というものですが、総合的に判断された各項目に点数がつけられ、合計点数で序列がつくようになっています。

この経審点の大小で、受託できる公共事業規模が決まったり、会社の評価にもつながります。

ネットを検索すると

建設業界における未成工事支出金(未成工事勘定)をネット上で検索すると、不正会計の手口や事例がたくさん出てきます。

原因は様々ですが、結局は何かの目的のために会計上の事実を変更して粉飾するということになります。

そして、これまでに指摘した通り、建設業では、特に未成工事勘定がその不正に使われることが多く、その要因として、予算管理の軽視、税務会計での利益過大化、経営事項審査における高評価期待の3つを挙げています。

経営者として

建設業界の経営者としては、この未成工事勘定の成り立ちや特殊性、特徴をきちんと理解して、自社の経営にあたる必要があります。

そもそも、不正を行うきっかけとなるのは、現実の数字が悪いからです。それであれば、現実の数字の悪化を防ぎ、より良い数字になるための行動計画を実行する必要があるはずです。

自社の中期経営計画の中で、売上対計上利益率を5%から10%以上へ伸ばすように、何から手をつけるのかを考えてもらいたいものです。

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